 |
 |
 |
|
 |
「こだわり会館」 B級ラジオ 一斉にうたえ、玩具たち |
 |
「グラスの底に顔があったっていいじゃないか」と言った岡本太郎サンみたいに、つぶやいてみたくなる。「ラーメンカップにラジオが付いてたっていいじゃないか」「ビール缶にラジオが付いてたっていいじゃないか」……。
兵庫県加古川市でパソコンスクールを開く塚原英成さん(51)のコレクションは「B級ラジオ」。ラーメンカップ型のラジオに、めんはもちろん入っていない。“脂肪たっぷり・かなりの塩味、土俵入りラーメン”とあり、力士の絵が描かれている。お湯を入れると3分で壊れます、との注記も。
「B級品だけにラジオとしての音質も悲しいものがあります」 ラーメンの隣には、消臭スプレーの缶。天才バカボンの「ウナギイヌ」と招き猫をかけあわせたようなヘンな動物キャラもいる。その横では往年の名DJ、ロイ・ジェームスさんを模した人形が口をパクパク。全部、ラジオだ。
写真で見るとガラクタの山に見えるけれど(失礼)、塚原さんはこうしたB級ラジオを約150種類集めた。その多くは中国製で、日本語の説明書きも首をひねらされるものが多い。
「ネットオークションで安く手に入れたり、人からもらったりすることが多いですね。ジュースの1リットルボトルを25本飲んで、ようやく懸賞で当てたものもあります」
B級品を集めているのはこの2年ほどだが、ラジオ趣味歴は長く、小学5年のころには工作に夢中になった。ビートルズのレコードがはじめて日本で発売された年で、トランジスタラジオはまだ子供に手の届く値段ではなかった。
「海の向こうの音楽はラジオでしか聞けなかった。とくにジャズに夢中になりました。あのころは小さなラジオだけが、世界につながる扉だったんです」
それ以来40年、ラジオの価値の下がりっぷりは、いまや携帯電話の遊び道具として使われているカメラと比べても、より急激だ。
「古いメディアの行く末、もののあわれに心ひかれます」
塚原さんは、壁際にセットされた自作機器のスイッチを入れた。インターネットで受信した海外の放送をAM電波で室内に飛ばす機器という。たちまち、どのラジオからも軽快なモダンジャズが流れ出す。ガラクタたちに急に生命が吹き込まれたかのような光景は、映画「トイ・ストーリー」のワンシーンを思い出させた。
「お祭りの夜店で売っているようなモノばかりだけど、ちゃんと、生きてる、のがイイんですよ。地震のときにも情報源として立派に役立ちますし。金魚すくいで100円で買った金魚でも、粗末にしないで大事に水槽で育ててあげるとかわいいでしょう。それに似たいとおしさがあるんですよ」
(文・宇都宮健太朗 写真・川原崎茂)
〈館長アラマタの講評〉
■わたしからも、一つ提案!
ラジオといえば放送内容や音質などソフト部分が重要だった。だが、現在では部品の小型軽量化で番組ソフトのみならず、本体ボディーまでさまざまな物品へ変身可能になった。ゴルフボール、たばこ、牛乳パック、クレジットカードサイズのラジオもある。しかも多機能で、時計や万歩計までついている。塚原さんのサイトで自作ラジオを募集しているので、ご提案。テレビをつけようとしてリモコンを押したら、いきなりリモコン自体が鳴りだす「テレビリモコン擬態型ラジオ」、いかが?(作家・荒俣宏) | | |
|
|
|